夏も終わり、朝晩はだいぶ涼しくなってきました。「これで寝苦しさから解放されてゆっくり眠れる」とホッとされている方も多いと思います。当院にお越しになる方からも「暑くてなかなか眠れなかったけど、ようやく落ち着きました」と安堵の表情を浮かべられる方が少なくありません。
この眠りの話題、何も夏に限った話ではありません。診療していて眠りの話題が出ない日は無いというくらい皆様からお話が出てきます。そこで、今回は“眠れない原因”について考えてみたいと思います。
受診される方から「眠れない」と相談された際、まず考えることは『眠れなくなっている原因がどこにあるのか』ということです。急激なストレスが原因となることもありますし、体の病気が原因になることもあります。生活習慣の乱れや不適切な睡眠環境、睡眠を邪魔する物質、うつ病などの精神疾患に伴う不眠症もあります。
このように、様々な原因で不眠となることから、その原因を特定することはとても大切です。そして、このような原因のある不眠症の場合、最初にすべきことは睡眠薬の投与ではなく原因の除去です。つまり、体の病気の治療や生活習慣の改善で不眠が解消される人もいますし、アルコールを控えるないし止めることによって眠れるようになる人もいます。また、ご高齢の方では持病などで服用されている薬が原因で眠れなくなっている人もいますし、ベンゾジアゼピン誘発性不眠症といって、いわゆる睡眠薬が原因で不眠になる人もいます。
眠れない理由は人それぞれですが、実は意外とご自身でも気付かないことが少なくありません。当院では、まず、眠れなくなった原因を一緒に考えて治療方針を決めていきます。原因を確認することなく「眠れない」と聞いて安易に睡眠薬を使うことはしませんし、特にうつ病などの心の病気の場合、その病気の治療をするだけで睡眠の質が格段に向上することはよく経験することです。また、必要性があれば睡眠薬の使用も検討しますが、その際はライフスタイルやお薬の依存性などを考慮して提案させていただいております。これからも、皆様がより良い眠りができるよう、お手伝いしていきたいと思います。