朝晩の冷え込みが少しずつ気になる時期になってきました。体調を崩されたりしている方もいらっしゃるかもしれません。この季節替わりのシーズン、こころの調子を崩される方も実は少なくありません。当院にお越しになる方にもうつ病の診断がつく方が増えています。そこで、今回はうつ病における休養について考えてみたいと思います。
うつ病に関わらず心療内科・精神科の治療で挙げられる方法として薬物療法があります。確かに有効な治療法の一つではありますが、うつ病治療の場合、薬物療法だけでは上手くいかないことがあります。仕事や学業、家事や育児など、のしかかる負担が症状を悪化させることが少なくなく、その状況をリセットするために休養が必要となります。
『休養』というと自宅や病院のベッドの上でじっと横になるといったイメージを持たれるかもしれませんが、うつ病の休養はずっと寝ていないといけない訳ではありません。もちろん、体も疲れきっていることが多いので体を休ませる時間も大切ですが、食事・睡眠などの生活リズムを崩してしまうと、こころにとっては逆に悪影響をもたらすことがあるので注意が必要です。
では、『こころを休ませる』とはどういうことか、ということになりますが、そのキーワードは“楽”です。「楽になった」「楽しかった」と思える時間を過ごすこと、それがこころの休養ということになります。“楽”の感じ方は人それぞれなので、体の休養とは異なり、こころの休養は個人差が大きいです。それだけに誤解も生じやすく、「怠けている」「ふざけている」と捉えられてしまうこともあります。こころの休ませ方には多様性があることを皆さんに知ってほしいと思う一方、誤解を受けないような適切な休み方についても考えていく必要があることを日々感じています。
「仕事(家事など)に穴を開けているのに楽しむ訳にはいかない」と自分を責め、つい何かしようとされる方がいらっしゃいますが、焦っている中で物事を行っても上手くいきませんし、上手くいかなければさらに自分を責めてしまいます。また、「楽しめと言われても…」という方も多くいらっしゃいます。そのような方々に休養の必要性を提案し、どのように“楽”を感じてもらえるかを一緒になって考えるのが私達の役割です。その答えが見つかり“楽”を実感できた時、回復への道が見えてくると信じて診療を続けています。